2013年12月2日月曜日

小さな頃の唄






小学生の頃、作文の授業がとても好きでした。

机の上にまっさらな作文用紙が置かれると、なんだかワクワクして、
先生に書いていいよ、って言われる前に鉛筆を持ってしまうくらい。

何も書きたいテーマなんかなくても、
ひとたび鉛筆を握ればスラスラと、
わたしならば原稿用紙をキャンバスに、
無限のお絵描きができる!・・・ような気がしていました。


「得意な事があった事 今じゃもう忘れてるのは
 それを自分より 得意な誰かが居たから」
「大切な夢があった事 今じゃもう忘れたいのは
 それを本当に叶えても 金にならないから」


そんな歌がありますが、まさにそんな感じで、
大人になるにつれてだんだんと、
そんなワクワクは忘れていったのですが・・・。


でも、最近一つ思い出したことがあります。

そういえば、なんで作文の授業が好きになったのか。

1年生か2年生か、とにかく小学校に入ってすぐの低学年の頃。
読書感想文で賞をとったことがあったんです。
よく覚えてないけど、県かなにかで表彰されて、
親も喜んで、わたしも嬉しかった・・・。


たぶん、そこで、
「できるじゃん」
て思ったんだと思います。


書くのが好きで、書いたら褒められる。
じゃあもっと書こう、と。

比較する相手も、証明する必要もなかった。
ただただ好きで、得意だったあの頃。


そのきっかけとなった読書感想文、
そこで取り上げた本の内容はすっかり忘れてしまいましたが、
タイトルだけは何となくずっと覚えていたんです。

で、

これが・・・

最近ふと気になって、
あらすじを調べてみたら・・・

ちょっとびっくりする内容でした。

ご存知の方も多いかもしれませんが、
少しだけ紹介させてください。
『きいろいバケツ』
という本です。

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(あらすじ)

主人公のきつねの子は、ある日、川の近くで黄色いバケツを発見します。
友だちのくまの子、うさぎの子にたずねてみても、誰のものなのかわかりません。

きつねの子は、そのバケツを気に入った様子。以前から、こんなバケツがほしいと思っていたのです。

そこで、一週間たっても持ち主が現われなかったら、きつねくんのものにしよう、ということを、くまの子、うさぎの子と決めます。

毎日毎日、きつねの子は、その黄色いバケツと一緒に過ごしました。

バケツをじっと見つめたり。

魚つりのまねっこをしてみたり。

雨が降った日は、雨に降られるバケツをかわいそうだと思ったり。

バケツに名前を書くまねをしたり。

バケツが風に飛ばされて、なくなってしまう夢をみることもありました。

バケツを見つけてからちょうど一週間後、結局バケツはなくなってしまいます。


このあとの、本文です。
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「ざんねんだなぁ。」
くまの子がきて、言いました。

「きのうは、ちゃんとあったのにねぇ。」
うさぎの子もきて、言いました。

「もちぬしがとりにきたのかな。」

「だれかが通りすがりにひろっていったのかしら。」

くまの子とうさぎの子が、くちぐちに言いました。

「どっちでもいい。」と、きつねの子は、思いました。

たった一週間だったのに、ずいぶん長いこと、黄色いバケツといっしょにいたような気がしました。

その間、あの黄色いバケツは、ほかのだれのものでもなく、いつもじぶんのものだったと、きつねの子は、思いました。

「いいんだよ、もう。」

きつねの子は、きっぱり言うと、顔を上げて、空を見ました。
青い青い空が、どこまでも広がっていました。

「いいんだよ。ほんとに。」

きつねの子は、もういちどそう言うと、くまの子とうさぎの子にむかって、にこっとわらってみせました。
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・・・という、お話だったのです。


きつねくん!!! (つд⊂)


めちゃめちゃいい話じゃないですか(泣)


そして深い・・・。

青い青い空の下で「いいんだよ」って笑うきつねの子。
その情景がまるで目に浮かぶよう。
その顔は寂しげで、でもきっとすがすがしい、爽やかな微笑みを浮かべているんだろう。


率直に言うと、
この本を選んだ自分、ぐっじょぶ。
と思いました(笑)

本なんて、候補は他にもいっぱいあったはず。

その中で、どうしてこのお話を選んだのか。
そしてわたしはどんな感想を書いたのか。
肝心なことは、何一つとして思い出せません。
自分のことなのに分からない・・・。


でも、たしかに過去のどこかの私がこの本を選んで、
何かを感じた。
一生懸命きもちを言葉に換えて、
何かを伝えようとしていた。


その心の足跡というか・・・
エネルギーのかけらのようなものを、
このあらすじを改めて読んだ時、少しだけ、自分の中に感じました。


その時ふと、もう何年も聞いていない、
けれどある時期にすごく好きだった、歌の一節がよみがえりました。

気づいたら口に出して歌ってた。



彼は現代の中毒者
うつろな目をして笑って
小さな頃の唄を忘れようとする
だけど忘れないであなたは生きてる
勇気の出る唄を一緒に歌おう

(BUMP OF CHICKEN 「ナイフ」)



歌詞の意味を改めて考えたことがなかったけど、
小さな頃の唄っていうのは、
誰の心の中にもある「消えない絵」のようなもののことかも。



あなたの小さな頃の唄は、どんなのですか?
覚えてますか?


忘れてたって別に生きていけるし、困らないんだけど。
もしも思い出せたら、一緒に歌えるかも。



*冒頭に書いた歌詞は、同じくバンプの「才悩人応援歌」という曲です。

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