2014年9月7日日曜日

箱の中にあったもの。





子どもの頃に好きだった絵本の一つに、「パンドラの箱」という話があります。

有名なギリシア神話なので知っている人も多いと思いますが、
一応、あらすじ。。


◇◆◇◆◇◆◇


昔々、世界には、豊かな楽園が果てしなく広がっていました。

住んでいるのは子どもたちだけ。
楽園には甘い果実が実り、食べたいものは好きなだけ、
欲しいものはいくらでも、いつでも手に入れることができました。

そのため、子どもたちは働くこともなく、お金を持つこともなく、
みんな仲良く楽しく、幸せに暮らしていました。

その中に、エピメテウスとプロメテウスという兄弟がいました。
ある日、二人のもとにパンドラという名の少女が訪ねてきます。

一目でパンドラの美しさに心奪われたエピメテウス。
弟プロメテウスから「決して開けてはいけない」と言われていた箱を、
パンドラの誘惑により、弟の留守のすきについつい開けてしまいます。

箱の中から出てきたのは・・・


「疫病」「悲嘆」「欠乏」「苦痛」「嫉妬」「飢餓」「恐怖」「疑惑」・・・


その他、ありとあらゆる災厄でした。

エピメテウスは慌てて箱のふたを閉めましたが、時すでに遅し。

化け物の姿をした災厄たちは一瞬のうちに外へと飛び出して、
みるみるうちに楽園の空を厚く覆いました。
人々はたちまち憎しみ、疑い、争い、諍い、苦しむようになりました。



途方にくれたエピメテウスとパンドラが箱の前で泣いていると、
箱の中からかすかに声が聞こえます。



「ねえ・・・お願い、開けて・・・」



2人はまた新たな災厄が出てくるのではと疑い、応じません。
けれどその声はとても優しく、柔らかに、


「お願い・・・どうか私をここから出して。」


と訴え続けます。

ついにエピメテウスは、その声のままに箱のふたを開けました。
すると、現れたのは・・・


幾重もの明るい光の衣を身にまとった、
女性のような、精霊のような、とても美しい存在でした。



「あなたは・・・?」


エピメテウスが尋ねると、
彼女はゆっくりと口を開いて、



「私は、希望。」




希望が箱から出ていくと、人々は争いの手をふと止めました。




・・・それから。


災厄に満ちた楽園は、楽園ではなくなりました。
子どもたちは、もう子どものままではいられなくなりました。
食べ物を手に入れるため、自分たちで働かなくてはなりません。

けれど、手に手を取りあって働く、その顔には笑みがあります。
明日はきっと、いい一日になるだろう。と、彼らは思います。
たとえもう、元の世界には戻れなくても。


人には、いつでも希望が残されているから。



◆◇◆◇◆◇◆


・・・パンドラの箱は、
あまりに有名すぎていろんな説があり、解釈もさまざまです。


本当は、希望すらも「災厄」であるという説もあって、
希望があるせいで、人は永遠に無駄な望みを捨てきれない・・・
なんていう解釈も(!)あるそうです。

このあらすじは、昔読んだ絵本を思い出して書いてみたのですが、
私はこの終わり方が好きです。


やっぱり、希望がないとね。


たとえ身ぐるみはがされて、持ってるものを全てなくしても、
どんなにひどいことが起きても、未来が見えてこなくても。


心の奥底に閉まった箱の中に、必ず希望が残ってる。


そんな解釈もありだよなーと思っていたら、
いつも通る道に、こんな看板がありました。

反射しててちょっと見えにくいですが・・・
まるで希望の光が射しているかのよう。笑




期待は裏切られるけれど、
希望は裏切ることがない。
そんな気もします。


箱にしまったままの希望があったら、出してあげてもいいかもしれません。^^





希望がないと不便だよな マンガみたいに
日々の嫉み とどのつまり 僕が笑えば解決することばかりさ

星野源 「くだらないの中に」の歌詞より。



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