2013年11月2日土曜日

軽やかな人




以前に同じ部署で働いていた同僚の一人に、
 「人の心を軽くする天才」がいました。
人の、というより、私の、と言った方がより正確ですが。

背が高くて、ボーイッシュに切られた短い髪。
利発そうな眉毛に愛嬌のある大きい瞳。
一言えば十を知るような要領の良さで、仕事もできる。
なのにいかんせん、本人がなんか常にヘラヘラしてて(笑)
仕事できるオーラも全然出さないし、
色気もわざと無いふりしてるのか?ってくらい出さないし(笑)
男女に限らずみんな実は彼女のことが大好きなのですが、
面と向かってはちょっと言いづらい、そんな人なのです。

怒ったり笑ったりよくしているけれど、
なんとなくサラっとしていて、一緒にいると深刻になれない。

彼女の同居しているおばあちゃんが呆けている、という話が私は大好きで、
(そんなこと言ったらよくないのかもしれないけど)
違う人が話せば悲劇になるような話を、
心底おかしそうに話すので彼女から聞くと喜劇なんですよね。

急いで作らないといけない資料にまみれて、
問い合わせの電話がばんばんかかってきて、
会議は明日!残業決定!なんていう時でも、
彼女と顔を見合わせて「し、死ぬ!!」とか言ってると妙に元気が出て、
まあ何とかなるだろう…と思ってしまうのでした。


私は何かあるとすぐ深刻になりがち。
「こうなったらどうしよう」「ああなったらどうしよう」
いつも心配事ばかりで、自分をしんどくさせることに長い時間を使ってきました。

楽しく生きてはいけない、
幸せになってはいけない…

実は、そんな信念をずっと長いこと抱えていました。
最近ようやく気づいて、手放そうと思えるようになったのですが。

まあ、自覚していないだけで、結構この手の厄介な信念(罪悪感と言い換えてもよいけれど)を持っている人は多いのではないか、と私は見ています。
ともかく、おそらく、彼女には幸いなことにこの種の信念が一切ないようで。

楽で、いい!
人生は楽しむべきもの!

代わりにこんな素敵な信念を持っているように私には見えました。



いつだったか、私が好きなバンドのライブのチケットがどうしても取れなくて、
いっそのこと地方まで行ってしまおうか…と迷っていたことがありました。
唯一チケットが取れそうな会場が、福岡県!

そこで私は大変悩みました。
いくら好きだからって、ライブのために福岡まで行くなんて、正気なのか?

お金も時間もかかる。
でもそれより何より、一番ネックになっていたのは、
「ただの楽しみのためにそこまでしていいのか?」
ということでした。

だって、「楽しく生きてはいけない」「幸せになってはいけない」という信念が心の底にあるわけですよ。
その時はそんなことには気づいていなかったけれど、
私は自分の信念に思いっきり反することをしようとしていたわけです。
でもきっと、それはチャンスでもあったわけです。
ずっと頑なに守ってきた、けれど本当は要らないものを捨てるためのチャンス。

それで、彼女に恐る恐る聞いてみた…。
たぶん、何か期待していたんでしょう。


「あの…。ものすごく好きなバンドがいるとして、ですね?
そのバンドのライブのために、どこまでなら行けます…?」

すると彼女はきょとん、として、
でもほとんど間髪を入れずに、

「え、韓国」

と。

そうだ、韓流ファンだった(笑)

なんかおかしくて、お互いおかしくて、
二人でひとしきり笑いました。
福岡のほうが韓国よりちょっと近いじゃん!って言って。
本当に、韓流スター(何回聞いても名前が覚えられない)のためなら彼女はどこにでもついて行ってるようで、私なんてその点足元にも及ばないのでした。

とにかく一事が万事、こんな調子で、
彼女の近くにいると、いつも気が軽くなった。
心が楽な状態で、それが普通なんだなと思えた。

初めての海外出張の前日、
実は不安で泣きそうになってた私に

「大丈夫、○○さん(私の名前)ならできるよ!」

と言ってくれた。
言い方がおかしくて思わず笑ったけど、
ほんとはものすごい嬉しかったし、今でもこの言葉がたまに私を救ってくれます。


そんな彼女に、つい先日久しぶりに会いました。

実は最近ちょっとだけ無茶なことをして、
楽しんだはいいんだけれど何やってんだろ私、
と思っていたことがあったのですが、
そんな私にやはり彼女は

「何も間違ってない!!」

と言ってくれました(笑)
本当に、私の心を軽くする天才だなー、と、
決して本人には言わないけれど、いつも思ってます。


『誰かと出会うたびに、人生をよりよくするチャンスがある。』 

どこで読んだのだったか忘れてしまったのですが、
誰かがそんなことを言っていました。
なんだかこの言葉を思い出すのです。


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